佐藤理人 12年12月15日放送
力道山④「シャープ兄弟」
その夜、新橋駅は異様な空気に満ちていた。
2万もの人々が集まって、
一台の街頭テレビを見つめている。
1954年2月、日本初のプロレス国際試合の生中継。
日本代表は相撲出身の力道山と柔道王木村政彦。
対するアメリカ代表は、
世界タッグチャンピオンのシャープ兄弟。
まず小柄な木村がシャープ弟に痛めつけられると
怒った力道山が空手チョップで反撃。
見かねて助けにきた兄もそのまま返り討ちにする。
2m近いアメリカ人を
日本人がコテンパンにやっつける。
敗戦のコンプレックスを抱えた人々に
その姿は大いにウケた。
肉弾戦なら日本は負けなかった。
そんなことを言う者までいた。
派手な投げ技。場外乱闘。タッグマッチ。
相撲とも柔道とも違う面白さ。
プロレスは一夜にしてブームになり、
テレビの急速な普及に大きく貢献した。
日本戦は視聴率がとれる。
力道山の読みは今も当たり続けている。