熊埜御堂由香 13年1月20日放送
夢のはなし 漂う石牟礼道子
著書、苦海浄土(くかいじょうど)で知られ、
水俣に住み、水俣病と向き合ってきた作家、
石牟礼道子(いしむれ みちこ)。
故郷への真摯な愛から、
土着派とも呼ばれた石牟礼は、
意外にもこう言う。
水俣にこだわり続けるほどにそこから
ふわりと浮きあがり、漂う民になったように
感じる、と。
そしてこんな夢を見るのだ。
毎夜、ねむり入るときまぼろしに誘われ、わたしは
インカやトルキスタンのとある時代の
砂漠の井戸を汲んでいる想いがする。
夢の世界でも、
石牟礼の意識は漂流しながら、
帰る場所を探している。