佐藤延夫 13年3月2日放送



刑事コロンボと夢多き男

病気で右目を失った男がいた。
大学を3ヶ月で退学したと思えば船乗りになり、
コック見習いとして大西洋を横断。
そのあとはイスラエルの軍隊に入ろうとするも戦争が終わってしまい、
いっそのことスパイにでもなるかとCIAの面接を受けるが、採用されなかった。

予算管理局で仕事をしながら通っていた芝居のセミナーで、
その男は、ようやく役者になることを決意する。
それは、セミナーの先生と交わした会話からだった。
いつものように遅刻した彼は、こんな言い訳をする。

「僕は、本当は役者じゃないんです」

すると先生は、ぴしゃりと言い返した。

「そう、ではあなたは役者になるべきよ」

高校を卒業したあと、11年もの空白を経て俳優になったのは、
のちに刑事コロンボで一世を風靡する、ピーター・フォークだった。

刑事コロンボ同様に、回り道がよく似合う男だ。

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