古居利康 13年3月17日放送
円空と木喰 5
修験道の修行のひとつに、
「穀断ち」という行がある。
穀物を食べることを禁じる行で、
米・麦・粟・稗・豆など五穀と呼ばれる
作物は人間の穢れにまみれた
俗世のものと見なし、それを断つことで
身を清廉にしようとした。
穀物を食べずに木の実や草の根のみを
食べたので、穀断ちの行は
別名「木喰戒」とも呼ばれた。
文字どおり、「木を喰らう」。
木彫りの仏像で知られる「木喰」も
この行を積み、その名も木喰とした。
木喰は、1778年、諸国修行で廻った
蝦夷国の松前で円空が残した円空仏に出会う。
それがきっかけで仏像をつくりはじめた、
と唱える研究者がいる。
真偽のほどは定かではないが、
木喰が60歳を過ぎてから仏像造りを
はじめたのは事実だ。
円空仏が直線的で荒々しいとすれば、
木喰仏は曲線的で丸みを帯び、おだやか。
そして、木喰仏は、笑っている。
円空仏も微かに神秘的に微笑んでいるが、
木喰仏は、破顔一笑、天真爛漫に
大笑いしている。