蛭田瑞穂 13年3月23日放送
黒澤明と七人の侍⑦
映画「七人の侍」。
その台本をつくるために黒澤明は
脚本家の小国英雄、橋本忍とともに
熱海の旅館に籠った。
農民に雇われた侍たちが、団結して野武士と戦う
という筋書きはできたが、そこにはひとつ問題があった。
当時の厳しい身分制度では、農民と侍がひとつになる
などということはありえなかった。
台本づくりは暗礁に乗り上げ、
一行も進まない状態が丸三日続いた。
4日目の朝、小国英雄にアイデアが浮かんだ。
2つの身分の橋渡しをする役として、
農民でも侍でもない人間をつくればいいのではないか。
こうして、姿は侍だがじつは農民の出の、
菊千代というキャラクターができあがった。
映画では三船敏郎が演じた、あの破天荒な人物も、
苦悩の末に生まれたものである。