礒部建多 13年3月24日放送
別れと狼
明治38年、奈良県の小さな村で、
ニホンオオカミの最後の一匹が確認された。
アメリカ人青年マルコム・アンダーソンは
最後のニホンオオカミを大英博物館へ運んだ人物である。
彼は東南アジア小型哺乳類収集団の一員として、
その村を訪れていた。
地元の猟師が手にしていたニホンオオカミの死骸を
マルコムは8円50銭で買おうとした。
猟師たちは、交渉の末、死骸を売り渡した。
それが日本での最後の一匹になるとは知らずに。
奈良県の東吉野村には、いま
等身大の日本オオカミのブロンズ像が立っている。