小山佳奈 13年6月29日放送
Guillaume Brialon
雨が降る季節には 向田邦子
雨が降るこの季節になると、
甘くみずみずしく実るのがメロンだが。
向田邦子の短編「かわうそ」の中に登場する
メロンは不気味な存在感を持っている。
日常の不幸をどこか楽しんでしまう妻と
そんな妻を持った夫の寂寥を描いたこの小説。
そのクライマックスで、いただきもののメロンを
妻が夫にすすめるシーンがある。
「メロンねぇ、銀行からのと、マキノからのと、
どっちにします」
1つではなくて、2つのメロンのいただきもの。
そこに八方美人な妻の酷薄さが見える。
それにしても向田邦子は、
食べ物に名脇役を演じさせる天才だ。
彼女には台詞すら唱える食べ物の姿が
見えていたのかもしれない。