佐藤理人 13年7月20日放送
アポロ④「アポロ1号」
1967年はアメリカの試練の年だった。
人種間の対立は深まり、
ベトナム戦争は泥沼化。
政府の責任を追求する声は
日増しに強まった。
ジョンソン大統領にとって
「アポロ計画」は
有権者の心を取り戻す絶好の切り札。
そのためには選挙期間中に月に着陸し、
無事帰還してもらわねばならない。
彼はNASAに計画の前倒しを求めた。
圧力に負けたNASAは
よりによって最も大切な
無人テスト
を省略してしまう。
グリソム、ホワイトという2人の大ベテランと、
史上最年少の宇宙飛行士チャフィーを乗せた
「アポロ1号」は、むきだしのコードから出た
ほんの小さな火花が元で火だるまになった。
ヘルメットのホースから
大量の炎が3人の肺に入り込み、
その命を燃やしつくすまで
わずか8秒半しかかからなかった。
手を伸ばせば届きそうな月。
しかし地球との間にある見えない壁は、
どこまでも高く、険しかった。