名雪祐平 13年7月28日放送
手紙 カフカ
公園で少女が泣いている。
人形をなくして泣いている。
散歩をしていた作家カフカは
少女をなぐさめた。
きみのお人形は、
旅に出たんだよ。
どうしてわかるの?
だって、ぼくのところに
お人形から手紙が来たからさ。
次の日、手紙をもってきて
少女に読んで聞かせた。
もちろんカフカが書いたものだった。
それから毎日手紙を書いた。
旅先でお人形は
いろいろな冒険をする。
青年と愛し合い、森で結婚式をする。
お人形は少女にお別れを告げ、
手紙も終わった。
もう少女は泣かなかった。
ただお人形をなくしたのではないから。
お人形はすべてを自分に伝えてくれたのだから。