古居利康 13年8月25日放送
Père Ubu
タルコフスキーの日記から ③1971年8月10日
『8月10日
書く時間がまるでない。
「ソラリス」でへとへとになった。』
旧ソヴィエトの映画監督、
アンドレイ・タルコフスキーは、
1971年の日記にそう書いている。
2年前に企画提案し、採用された、
映画『惑星ソラリス』。
ポーランドのSF作家、スタニスワフ・レムの
長編小説『ソラリスの陽の下で』を
原作とするこの映画企画に対し、
ソヴィエト当局の表現チェックは厳重を極めた。
宇宙開発の過程で遭遇した未知の天体。
人間の過去や記憶を、眼に見えるかたちで
再現する謎の物質。亡くなった妻と
瓜ふたつの女性に出会う主人公・・。
バラ色の未来ではない。
どこか閉塞的なモノトーンの未来。
1971年に入って、
ソヴィエト国内でのロケーション、
セット撮影は着々と進行した。
9月22日、タルコフスキーは、
ようやく日本へ旅立つことになった。