古居利康 13年8月25日放送
タルコフスキーの日記から ⑥1972年1月12日
『1月12日
昨日、N.T.シゾーフが、
中央委員会文化部、デーミチェフ文化相、映画委員会、
総管理局などさまざまな機関に寄せられた
『ソラリス』に対するコメントやクレームを私に伝えた。』
1971年12月に完成した映画『惑星ソラリス』
に対して、ソヴィエト当局の見解が下された。
35項目にわたる修正の要請だった。
1972年のタルコフスキーの日記に、その詳細がある。
未来の地球の姿を明確にせよ。
惑星ソラリスへの飛行シーンを入れよ。
神の概念を排除せよ。
キリスト教の概念を排除せよ。
ベッドシーンを短くせよ。
主人公がズボンをはかずに歩くシーンをカットせよ。
科学者の会議が「裁判」に見える。
結局、科学は人間的なのか、不明瞭。
観客には何が何だかわからないのではないか。
修正をすべて受け入れるわけにはいかない。
しかし、このままでは映画は公開されない。
映画監督は国家の理不尽に対して
粘り強く、慎重に戦おうとした。