奥村広乃 13年9月15日放送
老いらくの恋
人は、何歳まで恋ができるのだろう。
昭和23年の12月。
戦後間もない日本で、ある男が自殺を図った。
歌人、川田順。
恋に思い悩み、苦しみ、死をえらぼうとした時、
彼は68歳だった。
若き日の恋は、はにかみて
おもて赤らめ、壮士時(おさかり)の
四十路(よそじ)の恋は、世の中に
かれこれ心配れども
墓場に近き老いらくの
恋は、怖るる何ものもなし。
「老いらくの恋」という言葉は、
川田の詠んだこの歌からうまれた。
いくつになっても男と女。
これほどまでの大恋愛を、
うらやましく思う人も
少なくないのでは無いだろうか。