松岡康 13年12月15日放送



神様からの電話

ある漫画家のアトリエに国際電話が入った。

受話器の向こうの人物は、
アシスタントにペンと紙と定規を準備させ、
こう言った。

右上から4cm下に直線を引いてください。
そしてその線から、今度は左に5cm引いてください。。。

アシスタントが指示通りにペンを動かすと、
マンガのコマ割が描かれていく。
電話はさらにつづく。

 ブラック・ジャック第10話、
 3ページ目の4番目の背景の模様を、
最初のコマに書き込んでください!

電話の主は、マンガの神様、手塚治虫。

講演に来ていたアメリカから
電話越しで細かい指示を伝えたのだった。
驚くことに、彼の頭の中にはこれから描くストーリーと、
過去に書いたカットがすべて、正確に入っていた。

常人離れした記憶力と、マンガに対する熱意。
そしてなにより、どんな状況でも締め切りを守るプロ意識こそ、
手塚治虫が神様とよばれる所以なのかもしれない。

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