石橋涼子 14年1月19日放送
誕生にまつわる話 ウィリアム・サローヤン
アメリカの作家、ウィリアム・サローヤン。
彼は貧しい移民の子として生まれ、
幼くして父を亡くし、
大恐慌時代に職を転々としながら青春期を過ごした。
恵まれた環境で育ったとは言い難い彼だが、
作品では庶民の生活を温かくユーモアたっぷりに描いた。
底抜けに明るくて、ときにセンチメンタルなストーリーは
大人からこどもまで多くの人に愛された。
彼はこんな言葉を残している。
自分の誕生に我々は関与できないのであるから、
生まれたということ自体、
すでに「生きよ」という運命の結末なのである。
サローヤンは、
人が生まれや育ちを選べないことをよく知っていた。
「どう生きるか」を選べるのは自分だけ、ということも。
苦労を重ねた作家は、苦労をそのまま描かない。
ただ、人生は幸せばかりではないけれど、不幸ばかりでもない。
そんなささやかな日常を描き、
人々に明日への夢と希望を抱かせるのだ。
大きな夢ばかりが、アメリカンドリームではない。