道山智之 14年4月26日放送

140426-03

紀貫之③

平安時代の歌人、紀貫之。
30代にして最初の勅撰和歌集を編纂するなど
当代一の歌人として尊敬を集めた貫之。

しかし貴族としての地位は高いとは言えず、
59歳で土佐に赴任したのも、
経済的な必要に迫られてのことだったと言われている。

任期が終わり、京都へ戻る旅路のできごとを、
当時めずらしかったひらがな文で描いた名作「土佐日記」。
彼は役人であるという現実から自由になり、
大好きなひらがなと、やまとことばを自在にあやつるために、
作者は女性であるというフィクションを用いた。
自分自身は頑固な老人役で登場させている。

 男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり。

親しく支えてくれた人たちを、
次々に病でなくした失意の時期に書かれた名文。
やりきれない人生の旅路をウィットたっぷりに描き出す彼の背中は、
きっとブルース・シンガーを思わせたにちがいない。

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