飯國なつき 14年6月14日放送
雨に想う④ 宮沢賢治
宮沢賢治に「永訣の朝」という詩がある。
最愛の妹との別れをうたった詩だ。
病の床に伏す妹。
外はみぞれまじりの雨が降っている。
激しい熱と喉の渇きに、妹は賢治に
「あめゆじゅとてちてけんじゃ」、
「雨と雪をとってきてほしい」とせがむ。
ああとし子
死ぬといういまごろになって
わたくしをいっしょうあかるくするために
こんなさっぱりした雪のひとわんを
おまへはわたくしにたのんだのだ
死にゆく者を前にして、人は無力である。
賢治は妹の頼みを兄に対するやさしさと受け取った。
あめゆじゅとてちてけんじゃ
「永訣の朝」の中で繰り返されるこの言葉。
その響きはあまりに哀しく、あたたかい。