大友美有紀 15年1月4日放送
「密という名」前島密(まえじまひそか)
前島密は、幼名は房五郎、
そののちに、巻退蔵を名乗り、
前島家を相続したあとは、来輔となり、密と名を変えている。
改名の際の文字の出典は、朱子の『中庸章句』という書。
其の書は、始めに一理を言い、中頃転じて万事となり、
末にまたがっして一理となる。
之を放てば、すなわち六合(りくごう)にわたり、
之を巻けば、すなわち密に退蔵し、
その味はひ窮まりなし。
当時の知識人にとって『中庸章句』は初学の書であり、
これは巻頭の文。
聡明であった少年・房五郎は、この書にとても惹かれていた。