澁江俊一 15年2月14日放送
Hil
あまりにも理不尽な
江戸時代きってのストーリーテラー、
近松門左衛門の最大の問題作、
女殺油地獄(おんなころしあぶらのじごく)。
1721年に人形浄瑠璃で初演されたが
まったく評価されぬまま時は過ぎ、
約200年後の明治42年に歌舞伎で再演され
大ヒットとなった。
観客の感情移入をまったく許さない
悪人中の悪人が、主人公の与兵衛だ。
放蕩の限りを尽くし、義理の両親に暴力をふるい
油屋を営む家から勘当された与兵衛は、
さらに借金を重ね、同じ油屋の人妻お吉(おきち)を頼る。
ただ一人、与兵衛を理解しようとする美しいお吉に
何度も金を借りようとしたあげく断られ、
与兵衛はついに、彼女を殺してしまう。
クライマックス。
油と血にまみれ、滑りながらお吉を追い回す
殺害シーンは、まさに油の地獄。
殺しの動機は、金か、恋か、それとも?
それすらも、見る者にゆだねるこの物語に
近松は、どんなメッセージを隠したのだろうか。