三島邦彦 15年3月28日放送
trialsanderrors
気になるあの人 フィシェ兄弟
19世紀のパリ。
小さな芝居小屋にかける劇の台本書きを
生業にしている兄弟がいた。
兄の名はマックス、弟の名はアレックス。
貧しさから抜け出すため、
その文才と暇な時間を活かし、恋文の代筆業を始めた。
恋文作家フィシェ兄弟。
彼らのもとには、
忙しい紳士、文才のない男たちからの依頼が
次々と舞い込み、一躍大もうけ。
やがてパリの一角には恋文の代筆業者が
軒を連ね、恋文横町と呼ばれた。
彼らは、数多くの依頼に素早く対応するため、
恋文の定型文を用意した。
たとえば、毎日手紙を求める女性たちに向けに作った、
曜日別の書き出しと結びの言葉の一覧表が残っている。
月曜の手紙の書き出しは、
うるわしの君よ
火曜の手紙の書き出しは、
小さな小さなお人形さん
パリの街を舞台に、
彼らが描く恋愛劇は、
来る日も来る日も繰り返された。