飯國なつき 15年5月17日放送
海③ 立松和平
立松和平の小説「海のいのち」。
主人公は、海に生きる漁師の太一。
海のヌシに命を奪われた、父のかたきを討つために
太一はもぐってゆく。
巨大な海へ。
巨大な命の棲んでいる海へ。
季節や時間とともに、表情を変えてゆく海は、
そんなときでも美しい。
海中に棒になって差しこんだ光が、
波の動きにつれ、かがやきながら 交差する。
耳には何も聞こえなかったが、
太一は壮大な音楽を聴いているような気分になった。
美しく哀しい海のいのちを
淡々と語るこの物語は、
太一がなぜ海のヌシを倒すのをやめたのか、
静かな描写のみで、読者に問いかけてくる。