石橋涼子 15年5月24日放送
Akitoshi Iio
あいさつの話 阿久悠のさよなら論
さようならを英語で言うと「see you」
また会いましょうであったり、
「good luck」のように健康や幸運を祈る言葉になる。
世界のほとんどの言語で、
別れには希望や祈りが添えられている。
一方、日本語の「さようなら」は
もともとは「さようであるならば」であり、
ありのままを受け入れるという意味になる。
別れの事実だけを静かに受け止める言葉なのだ。
作詞家の阿久悠は「さようなら」を使う人が減っている、
つまり別れを自覚する人が減っていると嘆いた。
彼は言う。
人生の中で、別れということに無自覚なら、
感性をヒリヒリ磨くことも、感傷をジワッとひろげることも、
それに耐えることも出来ない。
なぜ、さよならを言わなくなったのであろうか。
人間はたぶん、さよなら史がどれくらいぶ厚いかによって、
いい人生かどうか決まる。
あなたが「またね」でも「お元気で」でもなく、
純粋な「さようなら」を最後に言ったのは
いつだろうか。