大友美有紀 15年6月7日放送
「それから」夏目漱石
今日は、プロポーズの日。
夏目漱石の「それから」には、
主人公が友人の妻に想いを告げる場面がある。
僕の存在には貴方が必要だ。
どうしても必要だ。
僕はそれだけのことを貴方に話したいために
わざわざ貴方を呼んだのです。
実生活の夏目漱石は、恋愛を感じさせない「堅物」である。
お見合いで出会った貴族院書記官の長女と、
親族の勧めもあって結婚した。
女性に宛てたラブレターも残っていない。
ただ、ある女性の死に際して詠んだ句がある。
漱石が密かに恋をし、結ばれることのなかった女性だ。
11月13日(日)新聞で楠緒子さんの死を知る。
9日大磯で死んで、19日東京で葬式の由。驚く。
11月15日(火)晴。床の中で楠緒子さんの為に手向の句を作る。
棺には菊抛げ入れよ有らん程
有る程の菊抛げ入れよ棺の中
漱石は、報われなかった思いを作品に昇華させていた。
プロポーズは、傑作を作る。