佐藤延夫 15年12月5日放送
指揮者の哲学 ブルーノ・ワルター
20世紀を代表するドイツの指揮者、ブルーノ・ワルター。
激情型のマエストロが多かったこの時代において、彼は異質の存在だった。
自らのことを「教育的指揮者」と喩えるように、
温和にして感情を表に出さず、その姿は心やさしき教師のようである。
そうは言っても、彼の言葉の端々には苦労がにじみ出ている。
オーケストラはまるで百の頭を持つ竜である。
彼らを思うままに操るのは容易なことではない。
ナチスに追放され、ヨーロッパを転々し
ついにはアメリカに逃れたワルター。
命の危険にさらされながらも、ステージではオーケストラと対峙していた。