大友美有紀 15年12月6日放送
「作家の犬」志賀直哉のクマ
白樺派を代表する小説家、志賀直哉。動物が好きだった。
たくさんの鳥、猿、そして多くの種類の犬を飼っていた。
ベタベタするのは苦手で、動物をなでることなどしない。
東京へ越したばかりの頃、クマという雑種の犬がいなくなった。
その時の様子を志賀の息子は覚えている。
たまたまバスの中から親父がクマを見つけました。
すると親父はいきなりバスを急停車させて飛び降り、
追いかけていってつかまえました。
僕は恥ずかしいからそんなことできなかったけれど、
後から考えると一緒にいた僕は
もう中学生だったんだから、
僕に行かせればよかったのにと、
そんなことを思いました。
簡素で無駄のない文章を書き、
多くの文学者から理想とされた作家の意外な行動。
「小説の神様」は、犬の前では、愛情あふれる市井の男だった。