伊藤健一郎 16年5月14日放送
さとっち
青春をかく人 伊坂幸太郎
学生時代を思い出して懐かしがるのは構わないが、
あの時はよかったな、オアシスだったなと
逃げるようなことは考えるな。そういう人生を送るなよ。
作家、伊坂幸太郎。
彼の小説『砂漠』は、大学での4年間が舞台だ。
物語の主要人物、偏屈な学生、西島は言う。
目の前の人間を救えない人が、
もっとでかいことで助けられるわけないじゃないですか。
歴史なんて糞食らえですよ。目の前の危機を救えばいいじゃないですか。
生きていれば、不条理なことなんて山ほどある。
そのひとつひとつに真剣に向き合うことなどできない。
でも、西島が言う通り、確かなことがある。
今、目の前で泣いている人を救えない人間がね、
明日、世界を救えるわけがないんですよ。