澁江俊一 16年6月12日放送
Saku Takakusaki
懐疑的であれ
世界初の消しゴム版画家にして
すぐれたTVコラムを書き続けた、ナンシー関。
今日は彼女の命日である。
テレビを見ながら
そこにうごめく人間もようを観察し
思いもよらない言葉を与えて読者を共感させながら、
そんな自分に、どこか懐疑的でもあった。
彼女のコラムは、多くの作家も魅了した。
ナンシーのファンだと公言する作家、
宮部みゆきはこう語る。
ナンシーさんが亡くなった時
司馬遼太郎さんが亡くなった時と
同じくらいの喪失感があった。
もう読めなくなると思うと、心細くなった。
「批評とは竟に己れの夢を
懐疑的に語る事ではないのか」
そう語った小林秀雄にならえば、
ナンシー関こそ、
本物のテレビ批評家だったのだ。