佐藤延夫 16年8月6日放送
作家とオリンピック 小林秀雄
1964年。
東京オリンピックの年、小林秀雄は62歳だった。
文芸評論家としての地位を確立し、
自らの作品でも、さまざまな賞を受賞した。
前年の1963年には、文化功労者にも選ばれている。
「文体をもった批評は芸術作品だ。」
三島由紀夫にそう言わしめるほどの彼が、
東京オリンピックの記事を書いた。
「何か感想を書かねばならぬ約束で、原稿紙はひろげたものの、
毎日、オリンピックのテレビばかり見ていて、何もしないのである。」
オリンピックは、作家の手を止めてしまうほどの媚薬なのか。