村山覚 16年8月13日放送
imarsman
昆虫採集 手塚治虫
自分のペンネームに「虫」という字を入れるほど
昆虫を愛した漫画家、手塚治虫。
子どもの頃から天才的に絵が上手だった手塚少年は
山でつかまえた昆虫や、昆虫館でみた珍しい虫を、
丹念にデッサンした。チョウの翅の赤色を再現するため
指をナイフで切り、絵の具にしたことも。
中学3年の時に「昆蟲つれづれ草」という本を作った。
昆虫エッセイや昆虫イラストは大人顔負け。
その中の一篇を紹介しよう。タイトルは「小さな剣士」。
こちらを向いてじっとしているさまは、
まるで一寸法師が鬼に向かっているか、
小人島の剣士が大男を向こうにまわして
闘おうとしているか、とにかく面白い。
よく見るとなかなか立派な服装だ。
だんだら縞の服に黒いビロードの胸着、
ハイカラな角帽子をちょこんと載せた頭。
これはハエの一種、メバエの観察記。
手塚が後にうみだすマンガやアニメを彷彿とさせる。
昆虫はよく宝石に例えられるが、マンガの神様にとっては
キャラクターの宝庫でもあった。彼が生涯で描いた700もの
作品のうち、180作品に昆虫が登場するというのだから。