大友美有紀 16年10月2日放送
「作家と本」荒川洋治・つか見本
本の外箱を作る時は、なかみの厚さを測らなくてはならない。
少しでも寸法が違うとなかみが箱から、すとんと落ちたり、抜けにくくなる。
それを避けるために作るのが「つか(束)見本」。
つか、とは本の厚みのこと。
本文、見返し、扉、表紙を実際に使う紙と同じものでつくる。
印刷はしていない。「白い本」のヒントになったのがこの「つか見本」。
現代詩作家の荒川洋治は、出版社から、ある作家の全集の第二巻の
「つか見本」と箱をもらった。箱は実際のもので文字が印刷されている。
今年はこの人のものをぜんぶ読もうと思っている作家の本の
「つか見本」だ。よろこびはひとしおである。
箱はほんものなので、箱におさめると、これが「白い本」であることは
おもてからはわからない。何につかおうか。
ひとまず、ほんものの第二巻の隣に並べることにした。
荒川は「つか見本」の重みは、格別である、という。
作品の重みとは違う。著者の重みとも、また違う。どう表現していいか。
なかみが白なので、わからない。