松岡康 16年10月23日放送
ムンクの叫び
ムンクの「叫び」。
真っ赤にうねる空に、暗い川が画の奥深くに流れていく。
真ん中にいる人物は大きく口を開け極端にデフォルメされている。
この画描かれている人物、実は叫んでいない。
「叫び」について、ムンクは日記でこう記している。
私は2人の友人と歩道を歩いていた。太陽は沈みかけていた。
突然、空が血の赤色に変わった。
私は立ち止まり、酷い疲れを感じて柵に寄り掛かった。
それは炎の舌と血とが青黒いフィヨルドと町並みに被さるようであった。
友人は歩き続けたが、私はそこに立ち尽くしたまま不安に震え、戦っていた。
そして私は、自然を貫く果てしない叫びを聴いた。
そう、この画に描かれた人物は、叫んでいるのではなかった。
自然の叫びに圧倒され耳をふさいでいたのだ。