澁江俊一 16年10月23日放送
応挙の幽霊
江戸時代の最高の絵師の一人で、
徹底した写実主義で知られる円山応挙。
目に映る風景を写実しながら、
輪郭線を使わない
独自に編み出した技法や
西洋の遠近法などを駆使して
目に見えないものまで描こうとした応挙。
彼が幽霊を描いた絵がある。
みだれ髪からのぞく
切れ長の目でこちらを
力なく見つめる美しい女。
儚げな白い着物をたどると
その脚は空中に消えていく。
病弱の妻を
想って描いたとされるこの幽霊は
後の世に脚のない幽霊の姿を広めた。
写生の達人だからこそ描けた
怖ろしさと美しさ。
応挙の妻への愛を感じながら、
見直してみたい。