小野麻利江 16年10月30日放送
お風呂のはなし イザベラ・バードが視た湯元温泉
19世紀イギリスの冒険家、イザベラ・バード。
彼女の旅行記の中には、詳細な数値が数多く登場する。
科学的な目で見て、伝える。
それがバードの信条の一つだった。
1878年5月、日本を旅しはじめたバード。
6月には奥日光の「湯元温泉」にたどり着く。
初めて見る日本の湯治場に驚いたバードは、
その様子を、こう記している。
この湯の温度は華氏130度であるが、
湯が村まで蓋のない木の樋(とい)に沿ってゆくと、
ただの84度となる。
湯元は四千フィート以上の高さにあり、非常に寒い。
ところどころに広い板が渡してあり、
リューマチに悩む人々は、何時間もその上に横になり、
硫黄の蒸気を身体に当てる。
バードの真骨頂とも言うべき、精緻な描写。
明治初期の温泉街の活況は、
当時のイギリス人読者のみならず、
現代の私たちにとっても、貴重な資料となっている。