大友美有紀 17年2月5日放送
「愛の手紙」川端康成
川端康成は、執筆のため逗留していた群馬の旅館から
妻・秀子に、怒りに満ちた手紙を出した。
新潮と文藝7月号送れ、
なぜ報告の手紙をよこさんのだ、馬鹿野郎、
手がくさつたつて代筆されることも出来るだらう、
さういふ投げやりな、きちんと片付けない、
ずるずる延ばしの性質が、とても助からん気をさせるのだ。
罵倒の言葉が延々と続く。
怒鳴りに帰ろうかと思った、とか、
仕事の疲れで気もまぎれないので
「婆さんのような顔」になった、とか。
怒ってはいるが、どこかしら可愛げのある文章だ。
妻に甘えているのかもしれない。
そんな文豪の素顔が垣間見える。