澁江俊一 17年5月14日放送
歌えない歌
明日5月15日は、沖縄が日本に復帰した日。
沖縄民謡の第一人者、登川誠仁がつくった
「戦後の嘆き」という歌がある。
沖縄のジミヘンと言われた登川が
得意の早弾きではなく、
ゆっくりと、切々と、搾り出すように唄う曲だ。
その歌をつくった理由を彼はこう語る。
住んでいた家の裏手に
酒を飲みながら泣く人がいてよ。
なんでこんなに泣くのかね、と思っていたら、
若い頃から戦で本土に行って
戦後、故郷に引き揚げてきたら、
家族が亡くなっていてよ。
だから酒飲んで泣いていたんだよ。
歌を作ることは好きだが、
こういう哀しい歌を自分で歌うと
自分も泣いてしまうから、
自分自身では歌いたくないよ。
つくるしかなかった。
でも、歌わない、歌えない。
三線の音色が切なく響く
とても静かな歌である。