渋谷三紀 17年8月19日放送
三島由紀夫と珈琲
作家の三島由紀夫は、
コーヒーよりも紅茶を好んだ。
深夜の執筆には、
いつも紅茶を準備した。
「夜会服」という三島の小説がある。
前半に描かれる優雅なアフタヌーンティとは対照的に、
最後に登場するのがコーヒーだ。
溺愛する息子との仲を割かれた姑が、
一人で飲むコーヒーの味についてこう語る。
「自分を助けてくれる人はもう誰もいない。
なんとか一人で生きていかなければ、と言う味なのよ。」
三島にとってのコーヒーが、
その行間から透けて見える。