村山覚 18年2月17日放送
Allagash Brewing
作曲家の朝食 ベートーヴェン
一杯のコーヒーはインスピレーションを与え、
一杯のブランデーは苦悩を取り除く。
作曲家・ベートーヴェンの一日は、コーヒー豆を数えることから始まる。
豆の数は、毎朝決まって60粒。
1粒ずつ正確に数えて、満足げに豆を挽くもじゃもじゃ頭の男。
その姿を想像するだけで、なんだか可笑しい。
耳が不自由で、テンポを正確に刻むメトロノームを愛用したという
ベートーヴェンのことだから、コーヒーミルをがりがりと回すリズムも
きっと一定だったろう。
4拍子?それとも3拍子?毎朝同じ数の豆を挽くという単純作業は、
さながら、オーケストラが演奏会の前に行うチューニングのようだ。
はじまりの合図であり、体と心を整える儀式。
さあ、はじめるぞ。がりがりがり。