礒部建多 18年5月20日放送
ジーンズで訴えた男
今日はジーンズの誕生日。
労働者の作業着として生まれたジーンズは、
1950年以降、強いメッセージ性を持つファッションへと変化する。
音楽の力によって。
1969年のウッドストック。
伝説と謳われた、愛と平和の音楽の祭典。
最終日に、トリとしてステージに現れたジミ・ヘンドリックスは、
美しいブルーのフレアジーンズ姿で、国歌「星条旗」を演奏し始めた。
最初は聞き慣れたフレーズが続いたが、
突然の変化に観客たちは驚いた。
まるで爆撃機の空襲音のようなノイズ。
人々の悲鳴のような弦の高鳴り。
激しく歪みながら鳴り続けるその狂気的な旋律は、
当時のベトナム戦争への痛烈な批判を表現していた。
そして、彼は観客へこう言い放ったと言う。
「愛国心を持つなら地球に持て。魂を国家に管理させるな。」
ロック史に残る、その圧倒的なステージ上の姿が、
ジーンズをも「反骨精神の象徴」へと変えていったのだ。