川野康之 20年4月18日放送
オランダに目覚めた男たち
江戸の長崎屋で、杉田玄白は、
偶然にも前野良沢が買ったのと同じ本「ターヘル・アナトミア」を
目の前に置いていた。
玄白はオランダ語そのものよりも
オランダ医学の修得に興味があった。
書かれているオランダ語は一語も理解できない。
しかし彼の目はその本の中にある解剖図に釘付けになっていた。
今まで見てきた中国の医学書にある五臓六腑の絵とまったく違うのだ。
この絵は実際に人体をスケッチしたものに違いない、
と医師のカンで見抜いた。
新しい医学はここから出発するのだ、
しなければならない、と玄白は思った。