厚焼玉子(事務局・中山佐知子)

厚焼玉子 17年12月9日放送

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菊 星野立子

1年365日の誕生日の花というのがある。
菊は今日の誕生日の花のひとつだ。

 菊日和 美しき日を 鏤めぬ(ちりばめぬ)

この句の作者星野立子(たつこ)は高浜虚子の次女で、
虚子は立子の句をこんな言葉で評価している。
  
「写生といふ道をたどつて来た私は
 さらに写生の道を立子の句から教はつたと感じる」

  菊日和 美しき日を 鏤めぬ

星野立子の句は菊の季節の晴れた空のように
のびやかで明るい。

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厚焼玉子 17年9月9日放送

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ジャン・ジレル

漆黒の茶碗の内側に
虹色に輝く星が散らばる曜変天目茶碗。

中国は宋の時代、わずかにつくられた曜変天目茶碗は
世界に4つしかなく、
その全てが日本の国宝であり需要文化財になっている。
しかし、現代の曜変天目は存在する。
制作者はジャン・ジレル。
生涯を曜変天目に捧げたフランスの陶芸家だ。

謎に包まれた曜変天目を
東洋の伝統と西洋の技術の融合で
現代によみがえらせるジャン・ジレルの作品は
9月12日から国立博物館で開かれる
フランス人間国宝展で見ることができる。

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厚焼玉子 17年9月9日放送

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セルジュ・アモルソ

彼が作るバッグの数は年に100個ほど。
顧客と直に話し合い、デザインを決める。

彼の仕事場には機械が一つもない。
バッグも、スーツケースも全て手縫いで作られている。

彼の名はセルジュ・アモルソ。
エルメスの工房で技術を培い、
パリにアトリエを開いてからは
オーダーメイドの作品を制作するようになった。

バッグや財布、スーツケースなどを
「芸術作品」と呼んでいいのだろうか?
その疑問への答を自分の目で確かめよう。

フランス人間国宝展、
9月12日から国立博物館で開催。

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厚焼玉子 17年9月9日放送

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クリスティアン・ボネ

屋久島の海亀保護のNPO法人の支援者たちの中に
MAISON BONNETという名前が見える。
これはフランスのオーダーメイド眼鏡の会社で、
その三代目社長クリスティアン・ボネは
フランスでただひとりの
そして最後の鼈甲細工職人だ。

ボネが作るのは眼鏡のフレームだけではない。
カフリンクス、ペーパーナイフ、櫛…
貴重な鼈甲の小さな破片も無駄なく利用するために
独自の技術も開発した。

その優れた技術によって
ボネはレジオンドヌール勲章を受け
フランスの人間国宝にも選ばれた。

フランス人間国宝展、
9月12日から国立博物館で開催。

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厚焼玉子 17年9月9日放送

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ロラン・ダラスプ

フランスの金銀細工作家ロラン・ダラスプは
こんなことを言っている。

 私が存在するためには
 美しい作品を創造し続けることが必要だ。

しかし彼が作る作品は美しいだけではなく、
常に革新を追い求めながらも
用途に合わせた機能も考えられている。

ダラスプが作る美しい作品は
例えば大統領から女王陛下への贈り物にされることがあるといえば
どれだけ高い評価を受けているかわかるだろうか。

そして彼はフランスの人間国宝でもあるのだ。

フランス人間国宝展、
9月12日から国立博物館で開催。

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厚焼玉子 17年9月9日放送

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リゾン・ドゥ・コーヌ

フランスの麦わら象嵌細工は
その起源を17世紀にさかのぼる。

当時は木箱の蓋に色付けされた藁で模様を描いたもので、
藁とは思えない精巧な図柄も見られる。

いっとき廃れていたこの伝統工芸を復活させたのが
人間国宝リゾン・ドゥ・コーヌで、
彼女はアンティークを修復しているうちに
麦わら象嵌の技法を習得したのだという。

農薬を使わないライ麦の藁は
上品な光沢を帯び、
その美しさに魅せられた顧客からは
家具や小物、住居の壁の注文もあるらしい。

フランス人間国宝展、
9月12日から国立博物館で開催。

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厚焼玉子 17年7月15日放送

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トゥシューズ、或いは空へのあこがれ

400年ほど昔、
バレエの客席が舞台を見おろす構造になっていたときは
誰もダンサーの足など気にしなかった。

220年前、ロンドンシアターではじめてフライングマシーンを使った。
ダンサーはワイヤーの助けを借りて爪先で踊るようになった。

1827年、マリー・タリオーニがはじめて自力で爪先で立って踊り、
空を飛ぶイメージを表現した。
そのときのシューズはただのサテンの布で、
爪先が少し強化されているに過ぎなかった。
しかし、トゥシューズの歴史はここからはじまる。

タリオーニに刺激されたダンサーは技術の向上にはげみ
靴職人はダンサーの要求にこたえていった。

手仕事でつくられるトゥシューズ。
空気のように軽い存在でありたい、
風のように漂いたい、空へ昇りたい。
そんなあこがれのために存在する。

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厚焼玉子 17年5月27日放送

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風と舟 ファルーカ

ナイル川の風は下流から上流に吹く。
この風を利用して川を遡る舟があった。
ファルーカという三角帆の舟だ。

川と風と舟のおかげで
ナイルは古代から海のシルクロードの重要なルートになっていた。
ワインもオリーブ油も、宝石もスパイスもファルーカで運ばれた。
ナイルの水とファルーカはエジプトの古代文明を支えた。

それにしても、ナイルの水はどこから来るのだろう。
紀元1世紀、ギリシアの船乗りディオゲネスが
ナイルの源流をさがして旅をした。
それから2000年余り、ナイルの源流さがしはまだつづいている。
三角帆の舟ファルーカは
いまではのんびり観光客を乗せているようだ。

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厚焼玉子 17年5月27日放送

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風と舟 ダウ

インド洋にはヒッパロスの風という季節風が吹く。
この風を帆に受けて走るアラブの船があった。
ダウと呼ばれる三角帆の船だった。

ダウは船乗りシンドバッドの船だ。
インド、ペルシャ、アラビア、東アフリカ…
一度船に乗ると何年も帰れない冒険に
何度も出かけていくシンドバッドの物語を読むと
当時のアラブの商人たちの
交易に賭ける意気込みがうかがえる。

シンドバッドの物語に登場する国王
ハールーン・アッ・ラシードの時代、
バクダッドには世界中の富が集まり
イスラム文化が花開いていた。

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厚焼玉子 17年5月27日放送

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風と舟 ジャンク

ジャンクは中国の船。
三本マストに四角い帆を張り、
その帆を竹で補強している構造だ。
はじめは沿岸を走る小さな船だったようだが、
10世紀を超えると「宝船(ほうせん)」と呼ばれる
大型船に発展した。

その大型船62隻の大船団を組み
季節風を受けて東へ船出したのが
中国の明の時代の皇帝に仕える鄭和(ていわ)だった。
鄭和の船団は4度めの航海でインド洋の西に達し、
5度めにはついにアフリカのケニヤに足を伸ばして
シマウマやキリンを持ち帰っている。

鄭和の宝船は、明の記録によると
全長137メートル、9本マスト。
当時としては世界最大の大型船だった。

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