五島のはなし⑯

美しい五島の私。

・・・書いてみたらどんな気分になるだろうと思って
書きましたがどんな気分にもなりませんね。
「美しい」が「私」の修飾語ではないと
はっきりしたぐらいでしょうか。

今さらですが、自己紹介します。
ここで五島のはなしを書くにいたった波乱万丈の半生を書きます。
えー自分のこと語っちゃうの?って感じですよね。わかります、すごいわかります。
でも書きますすみません。

僕は五島の福江島で生まれました。
父と母の実家が300メートルくらいしか離れていないという
生粋の五島人です。高校まで島で過ごし、
島でずっと暮らしたいと思いつつも
大学の間だけでも都会暮らしを!と思って関東に出てきました。
関東=東京のような大都市。と思っていたら
僕が行った大学はとっても田舎で、
4年間過ごした後、「あれ、念願の都会暮らしまだしてないぞ」って気分になりました。
じゃあいっそ外国の都会に行ってみようかと
ロサンゼルスに留学したのですが、あそこもだだっ広いだけで、
4年間過ごした後、「結局、都会暮らしを達成してないぞ」って気分に。
こうなったら、あこがれの東京で就職しよう!
ということで、東京の広告代理店(響きが都会的!)に就職し、
日本の学校で専攻した地質学とも、アメリカの学校で専攻した文化人類学とも
まったく関係ないコピーライターになり、そして結局あまり都会でもない
横浜のとある町に住んでます(本能が真の都会暮らしを避けているのでしょうか)。

5年働いたら島に帰ろうと思ってたんですが、
なんも成し遂げないうちに帰るのもかっこ悪いですし、
そうこうしているうちに仕事がおもしろくなってしまい、
そうこうしているうちに尊敬するコピーライターである
厚焼玉子(変わった名前と思うかもしれませんが、ペンネームです)さんに
声をかけられ、J-WAVEの「Vision」に原稿を書いています。
社会人になって9年が経ちました。早い。です。

いつか島に帰って恩返しを、的な気持ちを持っているのですが、
なかなかふんぎりがつかないので、
ここで少しでも故郷の五島を盛り上げようというのがこの趣旨です。
・・・ああ、書いてみたら何の波乱万丈もなかった。

がんばれ、五島(そして俺)!

カンヌより。

「マイケルが死んだ」
というニュースはここカンヌでも衝撃で。
お店ではマイケルの歌やビデオが繰り返し流れ、
みな広告の話そっちのけで語らっています。
マイケルについて。
そしてマイケルと共にあった自分の青春について。
それらを話す時、みんな悲しいんだけど少し楽しそうなのは、
マイケルの曲が必ずその人の
ちょっと恥ずかしくて、でも、ちょっとまぶしかった記憶と共に
あるからなんでしょうか。

申し遅れましたが、
いまカンヌにいます、Team visionの小山です。
カンヌ滞在記を書かないか?
と言われてうっかりそのまま最終日を迎えてしまいました。
初回にして最終回。
かもしれない。
しかも全然レポートじゃない。
本当にすみません。

これからフィルムの表彰式。
そしてグランドフィナーレです。

マイケル・ジャクソン放送中

Visionのトップページには
「八木田杏子 09年6月27日放送」として
マリリン・モンローの原稿が並んでますが。

今日、実際に放送されているのは、
八木田さんがリアルタイムで
書いた「マイケル・ジャクソン」です。

ぜひ聴いてください。

次のチャンスは22:54~
その次が23:54~

五島のはなし⑮

昨日、J-WAVE開局が島の中学校で
話題になったと書きましたが、
それといっしょに思い出したのが
ラフォーレ原宿。なぜかは覚えてないですが
ラフォーレ原宿も話題になっていた。
「ねえ、知っとる?ラフォーレ原宿、ナウかよね~」
と、皆で話してたのだ。だれも東京行ったことないのに。

さらに高校のとき好きだった女の子は
「東京に行きたい」が口癖で、なんで行きたいのか聞くと
「竹下通りば歩いてみたかけん」と言っていた。

そんなどこぞのわけのわからん通りより、
目の前の男のことを好きになってくれ
という気分で、なんというか
今でも竹下通りには嫉妬に似た気持ちを覚える。

そういえば、最近五島の高校を卒業したいとこが、
ディベートの授業(いまどきの高校はそんな授業があるらしい)
で「住むなら五島派VS住むなら都会派」の議論を
やろうとしたら、ほぼ全員「都会に行きたい」と言って
ディベートにならなかったと言っていました。

がんばれ、五島!

五島のはなし⑭

ほんと、いきなり思い出しました。
J-WAVEの開局の日のこと。
たぶん中3くらいだったです。
そのころは毎月「FMステーション」を読んでて、
わたせせいぞうさんイラストのカセットテープのラベルを集め、
せっせとラジオ番組を録音したり、レコードからカセットにダビングしたり
してました。聴いてたのはBOOWY、バービーボーイズ、サザン、ノーバディ、
TMネットワーク、ボンジョビ、a~haみたいな人たち
(書いてみるとすごく恥ずかしいのはなぜだろう)だったと思う。

で、J-WAVE。
なぜか島の中学(福江中学校)でも話題になってたんです。
クラスの中で、都会の事情に通じていたSさんという女子が
(そーいえばノーバディやボウイは彼女の影響ではなかったか)
「知っとる?〇月〇日J-WAVEの開局すっとよ」的なことを言ったのである。

Sさんが教えてくれたのか、情報誌で見たのか、
頭に「81.3」は刻みつけられてて、
開局の日、開局の時間に、ラジカセ(赤のAIWA、ダブルデッキだった)の
周波数を合わせて待ち構えていたが、うんともすんとも言わない。

そりゃーそーです。
J-WAVEの電波が九州のそのまた先の島まで届いてるわけがない。
でもそのころそんな親切な説明はどこにもなかった気がする。
しばらく後に「日本全国でJ-WAVEが聴けるわけではない」という
超基本的事実を知ったときの、なんというか、
残念さとみじめさと恥ずかしさを足してそのまま割らないみたいな感情は
いまでもけっこう覚えていて、それはもしかしたら、後々の
「いつか東京に行ってやる!」という気持ちのきっかけだったかも知れない。

おーい、20年前の俺!
なんか知らんけど、いま俺ちょっとJ-WAVEに関わっとるぞー!

と叫んでみたい気分。

五島のはなし⑬

僕は寝言がひどいです。
ひどい言葉を吐くようです。
先日も朝起きたら、子どもたちが僕にびびっているので
聞いたら「寝言が恐かった」と。
「地獄に落ちろ!」って叫んでたらしいです。
いいですね。
ふつうに生きていたらなかなか言わないセリフですからね。

寝言は五島人の特性じゃないかと勝手に思ってます。
僕の死んだばあちゃんもすごかった。
寝言もですが、寝歌。しかも鼻歌。
夜中、かすかに聞こえてくる「フンフーンフンフンフン」と、
それに続く「キャキャキャ」という笑い声。
ほんと恐かった。

聞けば、曾ばあちゃんも寝言がすごかったらしく
いつも決まって「ぬひと~、ぬひと~」と
言ってたらしいです。漢字にすると「盗人」。どろぼうですね。
これも夜中に聞く言葉としてはイヤです。

五島のはなし⑫

むしむしして暑いですね。
子どものころ暑さを苦にすることなんかなかったです。
えんえん遊んでられました。
いつまでも夏が大好きなチューブみたいな男でいたい
と思っていたのに、本格的な夏になる前にもう
ぐにゃ~っとしています。

五島で「ばらか」は、「すごい」の意味です。
人の形容詞として使われるときは、暴れん坊、勇壮な、
の意味合いも帯びてくる。

で、「ばらもん」。五島に伝わる大凧の名前は、
この「ばらか」+「もん(者)」から来た言葉です(だと思います)。
てっぺんにピンと張られた糸が「ブーン」と
独特の音を出します。魔よけ的な意味があるのだとか。
鬼のような顔つきです。
それと関係あるのかどうかわかりませんが、
鬼岳でこのばらもんの凧揚げをします。

ばらもん凧

ばらもん凧

五島のはなし⑪

五島にいたころ、仲のいい友だちのことを「チング」と言ってました。
僕はこの方言が好きで、「ともだちing」の「ちing」、
ふたり仲良く現在進行形!みたいなイメージを持ってたんですが、
実はこれ韓国語だったんですね。知った時は驚きでした。

驚いたといえば、島ではびっくりしたとき「あっぱよ」とか「あっぱさ」と
言います。これも韓国語の「アッパ」(痛い)から来てるんじゃないかと思います。
まあ、韓国近いですから交流が深かったとしても不思議じゃありません。
そもそも、文化とか言葉とかって思いがけず入り乱れてますね。

方言でもうひとつ。イタズラすることを「てんごする」と言います。
親によく言われました。「てんごするな」と。
で、何年か前に、隆慶一郎の『影武者徳川家康』を
読んでいたら(ちなみにこの小説、抜群におもしろいです)、
将軍が家臣に「転合(てんごう)をするでない」と言う場面があり、びっくりしました。
昔からある言葉なんですね。広辞苑にも載ってました。
熊本の友人も「てんご」は使うと言ってたので、
九州では広く残っているのかもしれません。

五島のはなし⑩

五島のはなし①で、五島は5つの大きな島があることから
その名がついたと書きましたが、厳密には違うみたいです。
先日、五島についてのネタがないかと
ウィキペディアで「五島」と検索してみたら、
(五島の人間が五島のはなしを書くのにウィキペディアを調べてる。
ほとんどサギだな)知らないかった事実が沢山!
なかでも基本中の基本、五島の名前の由来について、
「大きな島だけでも7,8個あるのに五島と名がついたのは、
5という数字が縁起が良いとする中国の思想のためで」云々と
書かれてました。へー。たしかに「五島」という観点で地図を見るから
大きな島5つな気がしてただけで、
その先入観がなければ5つとは言えない気がする。
なので、かつて僕をカツアゲしたお兄さん(五島のはなし①参照)への
メッセージを変更します。

「五島は、5という数字が縁起が良いとする中国の古い思想から
その名がついた、長崎の西およそ100kmのところにある島々です」

・・・でも、ウィキペディアの論もあくまで「説」なのであって
真の理由なんてわからないのかもしれない。

五島のはなし⑨

五島への行き方はわかった。
ビーチや山や祭りや、見どころもちょっとだけわかった。
で、夜はどう過ごせばいいのよ?
という声(もちろんそんな声あがってませんが)にお応えして、
今日は福江島のナイトスポットをご紹介します。

まず、ごはん。
いい店は、町を歩いている人に聞いてみてください。
ふれあいも生まれますし。
・・・すみません実は18までしか島にいなかったからあんまり外食してないんです。

そしてごはんが済んで、ちょっとお酒でもと思ったら
迷わず「ロイヤルパブ・シャーロック」に行ってください。
福江には人口と同じくらいの数のスナックがありますが、
パブはない気がします。なのにパブを通り越して、ロイヤルパブですから。
楽しいお店です。島の伝説から素潜り漁のことまで。
女性たちの話が抜群におもしろいです。そしてリーズナブルです。

シャーロックをのぞいてみて、もうちょっと静かな雰囲気で飲みたいな
と思ったら、シャーロックの2号店「クラブ・ホームズ」をお勧めします。
クラブです。ウイスキーグラスに入った氷のカランコロン音とともに、
ふけてゆく島の夜を堪能できます。

余談ですが、シャーロックが2号店を出すことになったとき、
「あんた東京でコピーライターなんかしよるけん名前ば考えて」と頼まれました。
シャーロックの姉妹店か・・・僕は迷わず「ワトソン」と言いました。
数日後「名前は、ホームズに決まったけん」と伝えられました。
へこみました。


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