藤本組・仲澤南

仲澤南 19年6月22日放送



夏至の話  オーストラリア

今日は、夏至。

日本では、いよいよ本格的に夏の暑さを感じ始める。
一方、南半球では季節が逆。違和感を覚えるかもしれないが、
冬に夏至を迎えることになる。

夏至という言葉を定義したのは、北半球の学者たち。
彼らは当時、南半球の存在も、地球が丸いことも
知らなかった。そのため、自分たちが暮らす
地域の季節に合わせて「夏の至り」と定義した。
同じ時期に真逆の季節を迎える地域があるとは、
つゆほども思わなかっただろう。

天文学的には地球上どこでも「夏至」なのだが、
オーストラリア人は、12月頃の日が高い一日を
夏至と呼び、今日は冬至と呼ぶのが一般的だという。

南半球の人と話すときには、
6月の話なのか12月の話なのか、確認が必要そうだ。

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仲澤南 19年5月11日放送


Nickmard-Khoey-Historical-Archive
温泉の話・パムッカレ・テルマル

トルコ西部にある温泉、
「パムッカレ・テルマル」。
その底にはなんと、
古代ローマ時代の遺跡が沈んでいる。

深いところで水深7mにも及ぶが、
透明度が高く水底の遺跡ははっきりと見える。
水着を着れば、入浴も可能だ。
踏まずには入れないほど、
大理石の柱がごろごろと転がっている。

底に沈むその遺跡は、
紀元前2世紀頃に建てられた都市、
ヒエラポリスの一部。
ローマ帝国の温泉保養地として栄えたヒエラポリスだったが、
度重なる地震によって廃墟となってしまった。
そのうち、かつて水の神様を祀る神殿だった場所に
温泉が溜まってできたのが、パムッカレ・テルマルだ。

ちなみにお湯の温度は少しぬるめで、
ゆっくりと浸かれる。
沈む遺跡に腰掛けながら、
悠久の歴史に思いを馳せるにはぴったりだ。

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仲澤南 19年4月27日放送


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平成よ、ありがとう。 「平成5年」

平成5年の女子高生にとって、
ポケベルは必需品だった。
数字や簡単な文字を受信できる、
小さな無線受信機だ。

人気に火をつけたのは、「語呂合わせ」。
平成5年当時のポケベルは、
数字しか送ることができなかった。
そのため女子高生たちは、
語呂合わせでメッセージを送ったのだ。
428で「渋谷」
724106で「なにしてる?」…。

そんなポケベル、
平成の時代が幕を閉じるのを追うかのように、
今年9月にサービスを終了する。
010…令和の時代には、
果たしてどんなコミュニケーションツールが
生まれるのだろうか。

平成よ、ありがとう。
いよいよ、令和へ。

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仲澤南 19年3月9日放送



切手のはなし  チョコレート味の切手

チョコレートの本場、ベルギー。
そこで生まれたのはなんと、
チョコレート味の切手だ。

裏面ののりにカカオの成分を使うことで、
なめるとチョコレートの味がするという。
味の再現は簡単ではなく、
最終的にはベルギー、ドイツ、オランダ、スイスと
各国の専門家が集まった。

ちなみにこの切手、
インクにもカカオの香料が使われている。
貼りつけるときにおいしいだけでなく、
届いたときにもチョコレートの香りが演出できるのだ。

今年のバレンタインデーは終わってしまったが、
チョコレートの香りとともに届く贈り物なんて、粋な計らいだ。

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仲澤南 19年1月26日放送


FoodCraftLab
発酵食品 テンペと納豆

インドネシアの納豆とも呼ばれる、テンペ。
日本の納豆と同じように作り方はシンプルで、
火を通した大豆に菌を付着させ、
発酵させることで作られる。

しかし同じ大豆で、似た工程を経て作られる
発酵食品であるにもかかわらず、
テンペと納豆では見た目や味がかなり異なる。
納豆が茶色く、糸を引く強い粘りと
強烈な匂いを持つのに対し、
テンペはクリーム色のブロック状に固まっていて粘りはなく、
味や匂いも淡白だ。

この違いを生んだのは、
それぞれが誕生した環境。
藁が敷き詰められた日本の住居では、
稲の藁に付着している納豆菌が、
赤道直下のインドネシアでは、
ハイビスカスやバナナの葉に付着しているテンペ菌が、
それぞれ大豆に働きかけたのである。

同じ大豆の発酵でも、その環境や働く菌の違いによって
まったく別の食べ物が生まれる。
発酵は、食べ物の可能性を想像以上に広げてくれるのだ。

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仲澤南 18年9月8日放送

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ESA/Hubble, M. Kornmesser
星のはなし かに座55e

惑星・かに座55eは、
表面を黒鉛に覆われていて見た目は真っ黒。
それにも関わらず、
「ダイヤモンドの星」と呼ばれている。
というのも、かに座55eの質量の3分の1以上が
ダイヤモンドでできているのだ。
その量は、地球3個分に相当するという。

貴重な宝石として知られるダイヤモンド。
着陸してスコップ1杯でも採取できれば、
かなりの価値になる。
しかしながらこのダイヤモンドの星、
表面温度が2000度にも上り、
とてもじゃないが着陸不可能だ。
さらには、地球から40光年も先に位置するため
生きているうちには到着できないだろう。

価値あるものは、
簡単には手に入らないから価値があるということか。

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仲澤南 18年9月8日放送

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P.Horálek/ESO
星のはなし ラヴジョイ彗星

エメラルドグリーンに輝く、ラヴジョイ彗星。
オーストラリアのアマチュア天文家、
テリー・ラヴジョイ氏によって発見された彗星だ。
太陽のすぐ近くを通過したにも関わらず消滅しなかった、
奇跡の彗星としてNASAに紹介されている。

そんなラヴジョイ彗星、
実はもう一つある特徴を持っていることで話題になった。
なんと人が飲む酒と同じ成分のアルコールを
糖類とともに宇宙に排出していることが分かったのだ。
その量、1秒間になんとワインボトル500本分。

ラヴジョイ彗星は2015年に地球に最接近し、
次に接近するのは遠く8000年後のことになるという。
その間、この彗星がどこか生命のある星に近づいたとしたら。
宇宙人も、私たちと同じように酔っぱらうのだろうか。

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仲澤南 18年8月25日放送

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James.Stringer
空港のはなし バラ空港

スコットランドの小さな島にある、バラ空港。
世界で唯一、ビーチに滑走路を持つ空港だ。

普段は観光客で賑わうビーチが、
1日数時間、潮が引く間だけ滑走路になる。
目印は、空港としての営業時間であることを示す吹き流しだ。
滑走路としての設備は、
注意を促す看板と終点に打たれた木の杭のみ。
それ以外はほぼ自然のままのビーチが広がっている。
その豊かな景色から、
世界一美しい空港の一つとしても名高い。

滑走路は潮が満ちると水没し、
潮が引いても海水に浅く覆われる。
そこへ着陸する飛行機。
水しぶきを上げるその様子は、
着陸というよりも着水に近い。

自然を残した簡易な設備での、
潮の満ち引きに左右される離着陸。
特に着陸はパイロットの勘に頼るところが大きいという。
世にも美しい空港は今日も、
パイロットたちの腕に支えられているのだ。

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仲澤南 18年7月28日放送

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海の工場 間宮

“海に浮かぶお菓子工場”を知っているだろうか。
その名は間宮。
海軍の兵士たちに食糧を補給するために造られた船だ。
1920年代から40年代、海の上の戦場までお菓子を届けた。

間宮は、ただ運搬するだけの船ではない。
“お菓子工場”という呼び名の通り、
船内に製造設備があった。そこにはなんと
60人もの菓子職人が乗り込んでいたらしい。

毎日の食事もままならない戦場に
ひとときの甘い幸せをもたらした間宮。
その姿が見えようものなら、
戦いに疲れた兵士たちは大騒ぎだった。

戦争が激化した1944年、間宮はマニラ沖で沈没。
その40年後、有志の手で慰霊碑が建てられた。
“海に浮かぶお菓子工場”は
その姿が海に沈んだ後も、人の心に残り続けている。

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仲澤南 18年7月28日放送

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海の舟 勝海舟

幕末から明治にかけて活躍した政治家、勝海舟。
日本が開国を迫られた時代に
世界と対等に渡り合うために力を尽くしたことで知られる。
1860年、軍艦「咸臨丸」による渡米も、彼の功績のひとつ。
幕府としては初めての、太平洋横断だった。

勝は、艦長として乗り込んだ。
しかし、およそ40日間に渡る航海のあいだ、
自分の部屋にこもりきりだったという。
理由は船酔い。さらに、伝染病の疑いまであったそうだ。

長い航海の間、衛生管理が行き届かず、
咸臨丸で伝染病が流行してしまった。
海の上では、逃げ場もない。
艦長の頼りない姿に、共に渡米した福澤諭吉は
ひどく呆れていたという。

海の舟と書き、海舟。
そう自ら名乗った男が、海の舟に酔ってしまうとは、、、
時代の荒波を乗り越えた幕末の英雄も、
本物の波は苦手だったらしい。

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