欲望という名の電車の夏
アメリカ・ニューオリンズの夏は、暑く、長い。
テネシー・ウィリアムズの戯曲 「欲望という名の電車」の舞台である。
名家出身の未亡人ブランチが、
貧しい妹夫婦を訪れる。
「神経が休まる」からと、熱い湯に浸かるブランチのせいで、
狭い家には熱気がこもる。
高慢な態度に苛立つのは妹の夫スタンリー。
汗をかいた肌にシャツが張り付く。
ブランチは、彼の粗野な姿に苛立ちを募らせる。
じっとりと不快な湿気は、物語のカギを握る重要なキャスト。
憎み合う二人を悲劇へ導く。
欲望という名の電車の夏
アメリカ・ニューオリンズの夏は、暑く、長い。
テネシー・ウィリアムズの戯曲 「欲望という名の電車」の舞台である。
名家出身の未亡人ブランチが、
貧しい妹夫婦を訪れる。
「神経が休まる」からと、熱い湯に浸かるブランチのせいで、
狭い家には熱気がこもる。
高慢な態度に苛立つのは妹の夫スタンリー。
汗をかいた肌にシャツが張り付く。
ブランチは、彼の粗野な姿に苛立ちを募らせる。
じっとりと不快な湿気は、物語のカギを握る重要なキャスト。
憎み合う二人を悲劇へ導く。
椿姫の夏
ヴェルディの名作オペラ椿姫。
高級娼婦ヴィオレッタと貴族アルフレードの恋は、
夏のパリからはじまる。
パーティーの夜、熱に浮かれ、歌い踊る人々に紛れ、
アルフレードは憧れの人へ愛を打ち明ける。
仮初の恋を楽しむばかりだったヴィオレッタは
真実の愛を知り、一輪の椿を差し出す。
「この花がしおれたときに、会いに来て」
「明日だね」
「ええ、明日」
ひと夏の、あつく、あまい、幸せ。
この恋は、決して悲劇だけではなかった
源氏物語の夏
紫式部作「源氏物語」の主人公、光源氏は
春、夏、秋、冬の名を持つ御殿に、妻や子供たちを住まわせた。
夏の御殿の主人は、花散里。
久しぶりの訪れに恨みごとも言わず
源氏の君の美しさに見ほれるようなおおらかな女性。
その住まいは、「どこもかしこも浮ついたところはなく、気品が漂っている」と
紫式部は書いている。
春や秋に比べ、
平安時代の夏は、静かに暑さをやりすごす穏やかな季節であった。
花散里と光源氏は、男女の仲が絶えた後も信頼し合い、
彼女は彼の子供たちを養育した。古の夏は、大人の恋の季節だったようだ。
蝉しぐれの夏
藤沢周平 蝉しぐれ
主人公文四郎と、幼馴染ふくの淡い恋は、夏にはじまる。
少年文四郎は、へびに噛まれたふくの指を口に含み、血を吸いだしてやる。
礼を言うふくの色白のほおが、なぜか気になった。
いつもと変わらないはずなのに。頭上では蝉が鳴いていた。
数十年後。
別々の人生を歩んだ二人に訪れたひとときの逢瀬。
一人になってから、文四郎は
「さっきは気づかなかった、里松林の蝉しぐれ」に包まれて
子どもの頃に遊んだ雑木林を思い出す。
脳裏には、ふくの白い頬も浮かんでいただろう。
夏に始まり、夏に終わった、長い長い恋の物語。
jun560
夏の夜の夢の夏
シェークスピア作「夏の夜の夢」。
駆け落ちしたハーミアとライサンダー。
しかし、妖精パックの惚れ薬のせいで
ライサンダーは一夜にして心変わり。他の女に夢中になってしまう。
恋は盲目。「どこを探しても分別などない」。
原題A Midsummer Night’s Dreamのmidsummerは、
夏至祭りのこととも、真夏の熱に浮かされた大騒ぎのことともいわれている。
ハーミアとライサンダーは、再び妖精の力でもとの恋人同士に。
まるで夢を見ていたかのよう。
夏の夜には、心惑わせる恋の媚薬が混じっているのだ。
上野公園を作った医師
明治6年、154年前の今日5月9日は、上野公園が開設された日。
戊辰戦争で焼け野原になった上野の山には、
病院が作られることになっていた。
異を唱えたのは、オランダ人医師、アントニウス・ボードウィン。
東京の近代化にやっきになっていた明治政府に、
豊かな自然を失くしてはいけないと進言する。
今、その恩恵を享受する人々を見て、
ボードワンは喜んでいるだろう。
噴水の西側、緑あふれる林の中に
その銅像はたたずんでいる。
上野公園を作った医師の銅像
明治6年の今日5月9日は、上野公園が開設された日。
自然を残し公園にせよ、と進言した
オランダ人医師、アントニウス・ボードウィン。
その功績をたたえ1972年に作られた銅像は、
2006年に作りなおされている。
新旧の銅像はまるで別人。あごひげもなくなった。
最初の銅像は、
手違いで、彼の弟の写真をもとに作ってしまったのだ
弟のアルベルトゥス・ボードウィンは、オランダ駐日大使。
日本の新時代を支えてくれた兄弟だった。
上野公園と森鴎外
今日5月9日は、上野公園が開設された日。
上野動物園の裏手には、
新婚の森鴎外が住んだ家が残る。
結婚の直前、
留学先のドイツから追ってきた恋人と別れさせられている。
事件を素材にした、処女小説「舞姫」は上野の家で執筆された。
新婚家庭で、別れた恋人を思い浮かべ筆をとる夫。
見守る妻の心はいかばかりか。
理由は定かではないが、
わずか1年半で離婚する。
鴎外にとって
上野公園は、ほろ苦い思い出の地であろう。
上野公園と夏目漱石
今日5月9日は、上野公園が開設された日。
「二人は別にいくところもなかったので、
(竜岡町から池之端へ出て)上野の公園の中に入りました」
夏目漱石 こころ。
恋のライバルKを自殺に追い込む冷たいことばを
主人公が投げつける、クライマックス。
その舞台が冬の不忍池。
褐色の杉木立と人気のない池が、
主人公のこころのごとく寒気を誘う。
一方、今、初夏の不忍池は新緑に包まれている。
夏がくれば蓮の花が池を彩る。見ごろは早朝。
都会の真ん中に、
さまざまな顔を見せる豊かな自然がある。
上野公園の大楠
今日5月9日は、上野公園が開設された日。
上野東照宮のご神木、
大楠は幹の太さ8メートルで上野公園最大。
樹齢は600年。
明治6年、上野公園ができたときも
江戸のはじめ上野東照宮に徳川家康がまつられたときも
数々の戦争や災害のときも、
大楠はそこにあり、人の営みを見つめてきた。
英語でcamphor tree
樹液はカンフル剤に使われたこともある。
上野の山の大楠は、
どんなときも気力を回復させる力を
東京の人に与えてきたのだろう
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