Morio
夜空を見る人②恩田陸
「夜のピクニック」という小説がある。
舞台となるのは“歩行祭”。作者の恩田陸が実際に体験した、
夜通し80キロ歩き続けるという学校行事だ。
歩き続けるうちにまわりはだんだん暗くなる。
隣を歩く友だちの顔が見えなくなるにつれて、
絡み合った人間関係が徐々に浮かび上がってくる。
みんなで、夜歩く。たったそれだけのことなのにね。
どうして、それだけのことが、こんなに特別なんだろう。
登場人物の一人が、ぽつりと、そう漏らす。
話せなかったことが話せるようになる。
そんな不思議な空間を、夜空は演出してくれるのだ。