先駆者たち③氷室冴子
氷室冴子という少女文学の名手がいた。
ジブリによって映画化された、「海がきこえる」の原作者だ。
もっと子供だったら気付かないだろう、
もっと大人であれば乗り越えられただろう、
日常の小さな“事件”たち。
そんな事柄にゆれる少女たちの姿が、
ときに繊細にときにコミカルに描かれる。
物語を支えるのは、作品によって自由自在に変わる言葉や文体だ。
彼女の、言葉に対する執着心は、
「ある作家の“句読点の打ち方”に惚れ込むあまり、
追っかけまでしていた」
というエピソードからも感じられる。