kina3
ひらく 王道
炊きたての白飯の上に
飴色に炒められた薄切りの玉ねぎ。
そこにきつね色の大きなトンカツが、
大きな体のせいですこし居心地わるそうに横たわる。
ぶ厚くてどっしりとしたカツと、
薄いがたっぷりの玉ねぎの押し合いへし合いを収めにかかるのは、
甘いそばつゆをふくんだ半熟とき卵だ。
「まあまあ」となだめるように両者をとろんと包みこみ、
ひとつの絶品料理へとまとめあげる。
東京は早稲田にある「三朝庵」は、
卵とじカツ丼の元祖の店だ。
大正7年、手違いで宴会用のトンカツが大量に余った翌日、
困った店主が冷めたカツをとき卵でとじて、
丼としてふるまったのが始まりだ。
日本の胃袋を満たすどんぶりの王道は、
とじたことで、ひらかれたのだ。