t.shigesa
花とことば⑦ 井伏鱒二
唐の時代の詩人、于武陵の「歓酒」は
別れの悲しみを詠った詩。
その一節、
「花発(ひら)けば風雨多し 人生別離足る」を
作家の井伏鱒二はこう訳した。
ハナニアラシノタトヘモアルゾ
「サヨナラ」ダケガ人生ダ
春は出会いと同時に別れの季節でもある。
桜が少しだけ物悲しいのはそのせいかもしれない。
t.shigesa
花とことば⑦ 井伏鱒二
唐の時代の詩人、于武陵の「歓酒」は
別れの悲しみを詠った詩。
その一節、
「花発(ひら)けば風雨多し 人生別離足る」を
作家の井伏鱒二はこう訳した。
ハナニアラシノタトヘモアルゾ
「サヨナラ」ダケガ人生ダ
春は出会いと同時に別れの季節でもある。
桜が少しだけ物悲しいのはそのせいかもしれない。
aoryouma
花とことば⑧ 梶井基次郎
櫻の樹の下には屍体が埋まっている!
これは梶井基次郎の短編小説
『櫻の樹の下には』の冒頭の一節。
主人公の語り手にとって、
爛漫と咲き乱れる桜はあまりにも美しすぎる。
その美しさが彼を不安にさせる。
そこで彼は想像してみる。
すべての桜の木の下に屍体が埋まっていると。
腐乱した屍体を養分にして桜は美しい花を咲かせる。
そう思うことで彼は心の均衡を取り戻す。
春。
いっせいに咲き、いっせいに散る桜に、
日本人は死のイメージさえ重ねる。
日本人にとって桜ほどとくべつな花はない。
mimimarker
ロボット① 倉田光吾郎
高さ4メートル、重さ4トン。
一歩踏み出すたびに地響きのように大地が動く、
そのロボットの名は「クラタス」。
大きいだけではない。
なんと、人が乗りこんで操縦することができる。
アニメから飛び出したような、夢のロボットの発売に、
世界中のロボットファンが熱狂した。
制作者の一人である、倉田光吾郎さんはこう語る。
4メーターサイズのロボットが動いたら、
怖いのか、面白いのか。
そういう感覚をいっぺん感じてみたかった。
誰よりも、自分が欲しいから作る。
そんな製品開発があっても、いい。
Takashi H
ロボット② キロボ
2013年8月、
宇宙に初めて行った、ヒト型コミュニケーションロボット、
「キロボ」。
国際宇宙ステーションでは
宇宙飛行士の若田さんと会話実験にも取り組み、
その様子を動画で、地球に届けた。
若田さんが一足先に地球に帰還するとき、
「一緒に帰れなくてごめんね」と謝ると、キロボはこう返事した。
気にしないで。僕が乗ると、定員オーバーになっちゃうから…
無機物であるはずのロボットに、
多くの人が、少しだけ、涙した。
kirainet
ロボット③ ブルーノ・メゾニエ
『世界初、感情を理解するロボット』と銘打ち発売された「Pepper」。
これまでのロボットとは一味違う軽妙なしゃべり口で、
お笑いコンテストにまで出場した。
開発を担当したのは、アルデバラン・ロボティクス社。
CEOのブルーノ・メゾニエは、
Pepperの上半身だけが人型なのはなぜ?と記者に問われ、
こう答えた。
コミュニケーションの大半は頭と腕、胸の部分で行うからです。
コミュニケーションにおいて脚はそれほど大切ではありません。
ロボットの開発は、
「人間とはどんなものか?」を浮き彫りにしていく作業でもある。
Ars Electronica
ロボット④ ロボットと感情
もし、ロボットに感情があったら。
主人である人間に嫌悪を抱き、反乱を起こすのではないか。
そんな不安が、多くの文学や映像作品で描かれてきた。
しかし、
アンドロイド研究の第一人者である石黒浩教授は、
あっさりとこう答える。
人を傷つけるかどうかは、人とアンドロイドの関係次第です。
人がアンドロイドを受け入れ、共存することを望むなら、
多少傷つけられても
一緒にいたいと思える関係を築けるようになると思います。
人間だろうが、アンドロイドだろうが、
一緒にいたい相手をたいせつにすること。
そんな当たり前のことを忘れて不安がることには、
なんの意味もない。
wintersweet
ロボット⑤ ロボットと人間
ロボットは、壊れやすい。
それは、工業製品としては大きな欠陥である。
丈夫で優秀なロボットを作ろうと、もがく研究者もいる中で、
これを面白がる人がいる。
デザイナー 山中俊治。
彼は語る。
すぐに壊れてしまう、死んでしまう。
生物においてそれは当たり前の特性。
そういう人工物を、予測不可能性を抱えた物を、手に負えない物を、
ようやく作れるようになったのだと思う。
その魅力を追求すべきだ。
ロボットの壊れやすさ。山中は、欠陥とされるそれに
生きものらしさと愛おしい魅力を感じた。
それが彼を惹きつけた。
欠点を魅力だと思えた時、人は夢中になるのかもしれない。
ロボット⑥ ロボットと労働
ロボティクスの進歩は、将来、人間の仕事を奪うのだろうか。
日本を代表するロボティクスベンチャーで活躍する松尾幾代は、
そんな通説を気持ちよく覆してくれそうだ。
彼女が開発を一手に担うのは、パワーローダー。
人が身に着けることで、人の何倍もの力を出すパワードスーツだ。
肉体労働の現場で働く男性をサポートするのが目的かと思いきや、
彼女が目指すのは、使い手を選ばないユニバーサルなものだという。
初めは、男性が使うことになるでしょう。
でもいずれは、そういった職場へ女性が進出するきっかけにしたい。
人間の仕事を奪うどころか、女性が活躍できる新たな可能性も拓く。
松尾幾代のロボティクスは、そんな未来を見せてくれる。
ロボット⑦ ロボットと文学「アイザック・アシモフ」
SF作家アイザック・アシモフが提唱した「ロボット工学三原則」。
「人間への安全性」「命令への服従」「ロボット自身の自己防衛」
という3つの原則を示し、フランケンシュタインなど
初期のSFから繰り返されてきた「ロボットが創造主を破滅させる」
というプロットに意義を唱えた。
ナイフに柄がついているように、
人間がつくるものには何らかの安全装置がなければならない。
科学者でもあるアシモフはロボットのあるべき姿をそう規定した。
ロボットはやがてSFを超えて現実のものとなったが、
アシモフの提唱した「ロボット工学三原則」は
現実のロボット工学にも影響を与えているという。
ロボット⑧ ロボットと文学「カレル・チャペック」
旧チェコスロバキアの国民的な作家なカレル・チャペック。
ある時チャペックは、人の代わりに労働をする
人造人間が登場する物語を構想した。
しかし、その人造人間をなんと呼べばいいのか。
悩んだチャペックが兄のヨーゼフに相談すると、兄が言った。
じゃあロボットにしたら。
「強制的な労働」を意味するチェコ語の“robota(ロボタ)”。
兄はその言葉を元にロボットという名前を思いついたのだ。
こうしてカレル・チャペックの戯曲
「R.U.R.(エル・ウー・エル)」によって
「ロボット」という言葉が初めて世に登場した。
ロボットは機械でも装置でもなく、文学として生まれた。
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