蛭田瑞穂

蛭田瑞穂 15年4月12日放送

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t.shigesa
花とことば⑦ 井伏鱒二

唐の時代の詩人、于武陵の「歓酒」は
別れの悲しみを詠った詩。

その一節、
「花発(ひら)けば風雨多し 人生別離足る」を
作家の井伏鱒二はこう訳した。

 ハナニアラシノタトヘモアルゾ
 「サヨナラ」ダケガ人生ダ

春は出会いと同時に別れの季節でもある。
桜が少しだけ物悲しいのはそのせいかもしれない。

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蛭田瑞穂 15年4月12日放送

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aoryouma
花とことば⑧ 梶井基次郎

 櫻の樹の下には屍体が埋まっている!

これは梶井基次郎の短編小説
『櫻の樹の下には』の冒頭の一節。

主人公の語り手にとって、
爛漫と咲き乱れる桜はあまりにも美しすぎる。
その美しさが彼を不安にさせる。

そこで彼は想像してみる。
すべての桜の木の下に屍体が埋まっていると。

腐乱した屍体を養分にして桜は美しい花を咲かせる。
そう思うことで彼は心の均衡を取り戻す。

春。
いっせいに咲き、いっせいに散る桜に、
日本人は死のイメージさえ重ねる。
日本人にとって桜ほどとくべつな花はない。

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飯國なつき 15年3月29日放送

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mimimarker
ロボット① 倉田光吾郎

高さ4メートル、重さ4トン。
一歩踏み出すたびに地響きのように大地が動く、
そのロボットの名は「クラタス」。

大きいだけではない。
なんと、人が乗りこんで操縦することができる。
アニメから飛び出したような、夢のロボットの発売に、
世界中のロボットファンが熱狂した。
 
制作者の一人である、倉田光吾郎さんはこう語る。
 
 4メーターサイズのロボットが動いたら、
 怖いのか、面白いのか。
 そういう感覚をいっぺん感じてみたかった。

 
誰よりも、自分が欲しいから作る。
そんな製品開発があっても、いい。 

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飯國なつき 15年3月29日放送

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Takashi H
ロボット② キロボ

2013年8月、
宇宙に初めて行った、ヒト型コミュニケーションロボット、
「キロボ」。
 
国際宇宙ステーションでは
宇宙飛行士の若田さんと会話実験にも取り組み、
その様子を動画で、地球に届けた。
 
若田さんが一足先に地球に帰還するとき、
「一緒に帰れなくてごめんね」と謝ると、キロボはこう返事した。
 
 気にしないで。僕が乗ると、定員オーバーになっちゃうから…
 
無機物であるはずのロボットに、
多くの人が、少しだけ、涙した。

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飯國なつき 15年3月29日放送

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kirainet
ロボット③ ブルーノ・メゾニエ

『世界初、感情を理解するロボット』と銘打ち発売された「Pepper」。
これまでのロボットとは一味違う軽妙なしゃべり口で、
お笑いコンテストにまで出場した。
 
開発を担当したのは、アルデバラン・ロボティクス社。
CEOのブルーノ・メゾニエは、
Pepperの上半身だけが人型なのはなぜ?と記者に問われ、
こう答えた。

 コミュニケーションの大半は頭と腕、胸の部分で行うからです。
 コミュニケーションにおいて脚はそれほど大切ではありません。

 
ロボットの開発は、
「人間とはどんなものか?」を浮き彫りにしていく作業でもある。

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森由里佳 15年3月29日放送

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Ars Electronica
ロボット④ ロボットと感情

もし、ロボットに感情があったら。
主人である人間に嫌悪を抱き、反乱を起こすのではないか。

そんな不安が、多くの文学や映像作品で描かれてきた。

しかし、
アンドロイド研究の第一人者である石黒浩教授は、
あっさりとこう答える。

 人を傷つけるかどうかは、人とアンドロイドの関係次第です。
 人がアンドロイドを受け入れ、共存することを望むなら、
 多少傷つけられても
 一緒にいたいと思える関係を築けるようになると思います。

人間だろうが、アンドロイドだろうが、
一緒にいたい相手をたいせつにすること。
 
そんな当たり前のことを忘れて不安がることには、
なんの意味もない。

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森由里佳 15年3月29日放送

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wintersweet
ロボット⑤ ロボットと人間

ロボットは、壊れやすい。

それは、工業製品としては大きな欠陥である。
丈夫で優秀なロボットを作ろうと、もがく研究者もいる中で、
これを面白がる人がいる。

デザイナー 山中俊治。
彼は語る。

 すぐに壊れてしまう、死んでしまう。
 生物においてそれは当たり前の特性。
 そういう人工物を、予測不可能性を抱えた物を、手に負えない物を、
 ようやく作れるようになったのだと思う。
 その魅力を追求すべきだ。

 
ロボットの壊れやすさ。山中は、欠陥とされるそれに
生きものらしさと愛おしい魅力を感じた。
それが彼を惹きつけた。
 
欠点を魅力だと思えた時、人は夢中になるのかもしれない。

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森由里佳 15年3月29日放送

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ロボット⑥ ロボットと労働

ロボティクスの進歩は、将来、人間の仕事を奪うのだろうか。
 
日本を代表するロボティクスベンチャーで活躍する松尾幾代は、
そんな通説を気持ちよく覆してくれそうだ。
 
彼女が開発を一手に担うのは、パワーローダー。
人が身に着けることで、人の何倍もの力を出すパワードスーツだ。

肉体労働の現場で働く男性をサポートするのが目的かと思いきや、
彼女が目指すのは、使い手を選ばないユニバーサルなものだという。
 
 初めは、男性が使うことになるでしょう。
 でもいずれは、そういった職場へ女性が進出するきっかけにしたい。

 
人間の仕事を奪うどころか、女性が活躍できる新たな可能性も拓く。
松尾幾代のロボティクスは、そんな未来を見せてくれる。

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蛭田瑞穂 15年3月29日放送

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ロボット⑦ ロボットと文学「アイザック・アシモフ」

SF作家アイザック・アシモフが提唱した「ロボット工学三原則」。

「人間への安全性」「命令への服従」「ロボット自身の自己防衛」
という3つの原則を示し、フランケンシュタインなど
初期のSFから繰り返されてきた「ロボットが創造主を破滅させる」
というプロットに意義を唱えた。

 ナイフに柄がついているように、
 人間がつくるものには何らかの安全装置がなければならない。

科学者でもあるアシモフはロボットのあるべき姿をそう規定した。

ロボットはやがてSFを超えて現実のものとなったが、
アシモフの提唱した「ロボット工学三原則」は
現実のロボット工学にも影響を与えているという。

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蛭田瑞穂 15年3月29日放送

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ロボット⑧ ロボットと文学「カレル・チャペック」

旧チェコスロバキアの国民的な作家なカレル・チャペック。

ある時チャペックは、人の代わりに労働をする
人造人間が登場する物語を構想した。
しかし、その人造人間をなんと呼べばいいのか。
悩んだチャペックが兄のヨーゼフに相談すると、兄が言った。

 じゃあロボットにしたら。

「強制的な労働」を意味するチェコ語の“robota(ロボタ)”。
兄はその言葉を元にロボットという名前を思いついたのだ。

こうしてカレル・チャペックの戯曲
「R.U.R.(エル・ウー・エル)」によって
「ロボット」という言葉が初めて世に登場した。

ロボットは機械でも装置でもなく、文学として生まれた。

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