蛭田瑞穂

飯國なつき 15年1月11日放送

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TexasEagle
片思い③「苺をつぶしながら」田辺聖子

片思い小説の名作と謳われる、田辺聖子の三部作。
三作目は、『苺をつぶしながら』。

片思いした独身時代、
片思いされた夫婦時代を経て、独り身となった、主人公の乃里子。
行きついたのは、友達としての男関係だった。

 生活力の強そうな男って、
 私にはごくたより甲斐がありそうに思われる。
 しかし、それもいま、この一瞬だけの感動だと、私は知ってる。
 そして友情なんてのは、一瞬をつなぎ合わせてりゃいいのだ。

この三部作を読みながら、
自分は今どこのステージにいるのだろう、
そんなことを考えてみるのも一興だ。

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森由里佳 15年1月11日放送

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よっちん
片思い④樋口一葉

恋は、美しいか?
樋口一葉は、
師である半井桃水への想いを綴った歌でこれを否定する。

 みぐるしく、にくく、うくつらく、浅ましく、
 かなしく、さびしく、恨めしき、厭う恋こそ、恋の奥なりけれ

見苦しく、悲しい「厭う恋」こそが、恋である。

まだまだ女性に対して閉鎖的だった時代に、
女性作家の文壇への道をひらいた一葉。
しかし、半井桃水への想いが通じることは、ついぞなかった。

「厭う恋」を厭いながらもその恋を抱え、
恋にも時代にも屈せず筆を握り続けた彼女の姿は、孤高ゆえに、美しい。

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森由里佳 15年1月11日放送

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片思い⑥藤原義孝

平安時代の歌の名手、藤原義孝。
稀代の美男子としても呼び声が高かったにも関わらず、
はやり病に倒れ、21歳の若さで亡くなってしまう。

 君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな

君が僕の事を想ってくれるなら、
この命だって惜しくないと思っていた。
でも、いざ、君が想ってくれていると知ったら、
少しでも永く、この幸せの中で生きたいと想うようになったんだよ。

愛は、その人のために生きることを望ませるが、
恋は、その人のためなら死さえ選ばせる。
片想いは、いつの時代も必死なのだ。

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森由里佳 15年1月11日放送

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片思い⑤小野小町

六歌仙として名を連ねる歌人、小野小町。
平安の才女が恋多き女性であったことは、
彼女が詠んだ歌からも伺える。

 思ひつつ 寝ればや人の 見えつらむ
 夢と知りせば 覚めざらましを

あの人のことを想いながら寝たから、
夢に彼が出てきたのだろうか。
もしも、夢だとわかっていたなら、
目を覚まさなかったのに。

片想いも、夢も、
さめたらそこで終わってしまう。
「夢中になる」とはよく言ったものだ。

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蛭田瑞穂 15年1月11日放送

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片思い⑦ロラン・バルト

フランスの思想家ロラン・バルトは
恋愛に関する著書でこんな故事を紹介している。

昔、中国のある高官が歌姫に恋をした。
「わたしの部屋の窓の下で、百夜お待ちくだされば、
あなたのものになりましょう」、女はそう言った。
男はそのとおりに待ち続けた。そして九十九日目の夜、
男は立ち上がり、静かにその場を立ち去った。

男はなぜ待つことをやめたのか。
もちろん、それは誰にもわからない。
どんな思想家にも解明のできない難問が恋愛なのだ。

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蛭田瑞穂 15年1月11日放送

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片思い⑧ウディ・アレン

恋愛映画の名手ウディ・アレンは
恋愛に関する数々の名セリフを残している。

 恋をすることは苦しむことだ。
 苦しみたくないなら、恋をしてはいけない。
 でも、そうすると、恋をしていないということで
 また苦しむことになる。

これは「ウディ・アレンの愛と死」でのセリフ。

 恋愛とはサメのようなものだ。
 常に前進していないと死んでしまう。

これは「アニー・ホール」でのセリフ。

そんなウディ・アレンの考える究極の恋愛とは?

 長続きするたったひとつの愛の形は片思い。

勉強になります。

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飯國なつき 14年12月7日放送

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贈り物① よさこい節

 土佐の高知の
 はりまや橋で
 坊さん
 かんざし買うを見た

高知県に伝わるよさこい節は、
江戸時代に起こった実話をもとにして、作られたと言われている。

竹林時のお坊さんであった純真は、
修行中の身でありながら、
お馬という女性と恋に落ちてしまう。

お坊さんであっても、恋い慕う気持ちはもちろん同じ。
お馬にあげるかんざしを、こっそりと買い求めた純真だったが、
街の人に目撃され、噂が立ってしまう。

駆け落ちを試みるも失敗し、
ついぞ、二人が添い遂げることはなかった。

純真の思いの丈のつまった一瞬は、
今も、民謡として歌い継がれている。

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飯國なつき 14年12月7日放送

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贈り物② 伊藤理佐「おいピータン!」

漫画家、伊藤理佐さんの作品「おいピータン!」。
登場人物のひとり渡辺さんが、誕生日を迎えた時のこと。

同じ職場の彼氏は、なぜかその日はお休み。
「誕生日の私が働いているのに…」
と、いらいらする渡辺さん。

彼氏の家に行ってみると、思わず感激する。

大量の本を片付けるために棚が手作りされ、
電球は全部入れられ、
布団もちゃんと片付けられ…
渡辺さんがずっと気にしていたことを、全部やってくれていたのだった。

そして、おまけのプレゼントは、
渡辺さんが「一度やってみたい」と言っていた、
いくらの食べ放題で、大喜び。

どうすれば相手が喜んでくれるか。
それさえ大切にしていれば、
贈り物の形は、もっと自由になっていいのだ。

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飯國なつき 14年12月7日放送

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贈り物③ マルチン・ルター

クリスマスの贈り物に、
親はいつも悩まされるものだが。

1535年、まだ貧しい大学教授だった
宗教改革の創始者マルチン・ルターは
子供たちへの贈り物を買うお金にすら困っていた。

しかし妻から、
子供たちの好きな肉団子のスープを作るから大丈夫、
と励まされ、ルターは歌を作って贈り物にすることを決める。
山から抜いてきたもみの木の周りで歌った歌は、
翌年以降も一家の定番となった。

後にルターはこんな言葉を残している。

 ドイツの国をくれるといわれても、
 私は、それよりも、優しい妻がいる家庭を選ぶ。 

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森由里佳 14年12月7日放送

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minxlj
贈り物④ ティファニー・ボウ

まっ白なサテンリボンがむすばれた、
スカイブルーの小さな箱。
女性なら誰もがときめく贈り物だ。

ティファニーの創設者、
チャールズ・ルイス・ティファニーには、
あるこだわりがあった。

それは、リボンの結び方。

女性が少し引っぱるだけで、
小箱の上で白いリボンが美しくほどけていく。

そのなめらかなさまは、
女性たちの胸の高鳴りを加速させる。

それは、
彼女たちが輝くジュエリーを目にするまでの
ほんの小さな演出に過ぎないけれど、
リボンがするりとほどけるその瞬間、
女性たちのこころもまた、
贈り主のこころの中へとほどけていくのだ。

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