贈り物⑤ 井上ひさし
井上ひさしの戯曲は、
社会や人間への不満・疑問を投げかける中で、
必ず、笑いを含んでいる。
その理由の一つに、こんなことがある。
人間の愚かさが誰かに注意されて改まるならば、
悲しみや怒りではなく、
笑いによって注意を下されるべきではないだろうか。
耳を塞がれがちな意見や不満を、
笑いという「贈り物」に変える。
そうすれば、心ない観客が見ても、
それはきちんと楽しまれる。
一方で、心ある観客には宿題を残すのが井上戯曲。
それは、「あなたはどうだ?」という問いだ。
その問いが放つ心の波紋こそが、
井上からの最高の贈り物だといえるだろう。