蛭田瑞穂

星合摩美 20年2月9日放送



肉  串打ち三年焼き一生

やきとり職人は「串打ち三年焼き一生」と言われる。
ミシュラン一つ星獲得店「あやむ屋」の串打ちは、
細長い扇型が理想形。
串の一番下の肉は、上よりも小さい。
わずかに弱火になる焼き台手前に、火の通りの良いサイズを見極める。

焼きは炭火で素早く一気に。
肉表面の焼け具合と、
串のわずかな重さの変化を捉え、1、2回だけ裏返す。

こうして焼きあがったやきとりは、外はパリッと、中はジューシー。
まさに職人の「技あり一本」だ。

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星合摩美 20年2月9日放送


『肉食之説』(京都大学附属図書館所蔵)部分
肉  肉食のススメ

「肉食せざるべからず」
明治15年「肉を食べなさい」と説いた福沢諭吉。
日本で長くタブーとされてきた肉食を、
滋養のために取り入れるべき、と考えた。

諭吉の活動は、牛肉販売会社の宣伝本を書き、
慶應義塾の食堂に、肉食メニューを出すほど熱心だった。

その甲斐もあってか、
牛肉とネギを割り下で煮て食べる「牛鍋」が大流行。
わずか10年ほどで、数百件の店が誕生した。
私たちを楽しませている肉グルメの発祥は、
諭吉の「肉食のススメ」と言えるかもしれない。

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森由里佳 20年2月9日放送


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肉  生け捕りジビエ

鹿、兎、鴨、イノシシ…
これらの動物に共通点があるとすれば、
ジビエと呼ばれて美食家たちに愛されていることだろうか。

自然の命をいただくのだから、最もおいしい食材にしないと申し訳ない。

あるジビエハンターは、そういって、鉄砲ではなく手作りの罠にこだわる。
鉄砲で傷つけてしまうのではなく、素手で捕獲し、生け捕りにするのだ。
そうして捕獲から解体、調理までのすべてを行うのだという。

自分でやりきるから、余すことなくいただける。
「いただきます」の本来の姿を、突き付けられた気がした。

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森由里佳 20年2月9日放送



肉  ジビエと人びと

ジビエとは、狩猟によって捕獲された野生の鳥と獣の食肉のことだ。
実は、ジビエ流行の裏側には、
ジビエ、いや、野生の獣による農作物の被害という問題がある。

捕獲した獣たちを殺処分するのではなく、
ジビエとしてその命のありがたみをいただけないか―?
そう考えた自治体や地域団体が、
衛生的な処理とスピーディな流通を実現させようと挑戦を続けている。

美味しくて高級、貴重なジビエ。
ナイフを入れる時には、さまざまな人の熱意にも感謝しながらいただきたい。

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蛭田瑞穂 20年1月12日放送


Okinawa Soba (Rob)
和服  フライトアテンダントの着物

着物を着たフライトアテンダントがかつて存在していた。

1954年、日本航空が初の国際線となるサンフランシスコ便を就航させる。
その便ではファーストクラスを担当するフライトアテンダントは
機内で制服から着物に着替え、旅客をもてなした。

元旦のフライトではエコノミークラスにも足を運び、
お屠蘇を振る舞うサービスもおこなわれたという。

着物のフライトアテンダントはジャンボジェットの時代に至るまで
30年以上に渡って続けられたが、1990年に惜しまれつつ終了した。

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蛭田瑞穂 20年1月12日放送


時事通信社
和服  大発会の着物

東京証券取引所の年始最初の取引日を大発会と呼ぶ。

昭和の時代、大発会の日は、女性社員は晴れ着で出社し、
着物姿で伝票の仕分けなどをしていた。

人の手からコンピュータシステムに変わった今も
晴れ着を着る風習は続いている。

大発会には晴れ着を着た証券会社の女性社員が並び、
新年にふさわしい華やかさを添える。

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佐藤日登美 20年1月12日放送


首相官邸
和服  即位礼正殿の儀の装束

令和元年、10月22日。
即位礼正殿の儀が執り行われた。

天皇陛下が国内外に即位を宣明する儀式。
そのお言葉とともに、装束姿も注目された。

平安時代を思わせる黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)と呼ばれる装束を身にまとった天皇陛下に続くのは、十二単姿の皇后さま。
一番上の御唐衣(おんからぎぬ)は白と萌葱色、その下に薄紫色と赤のグラーデーションが美しい。

時代の変わり目にしか見ることができない、雅なお姿だ。

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佐藤日登美 20年1月12日放送



和服  国民祭典の着物

令和元年、11月9日。
「天皇陛下御即位をお祝いする国民祭典」の場で祝辞を述べた、女優・芦田愛菜さん。
彼女が着た着物は、老舗呉服店・鈴乃屋が用意した。

生成色に菊の花の刺繍が施され、豪華ながら上品な佇まい。
着物に描かれた「紗綾形(さやがた)」と呼ばれる文様は「卍」の文字を斜めに崩し、
連続的につなげたもので「家の繁栄」「永遠」「長寿」を意味する。

100年ほど前から、誰も袖を通したことがないという貴重な着物。
新しい時代の幕開けに彩りを添えた。

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星合摩美 20年1月12日放送


Christian Kaden
和服  結ぶ

洋服が身体に合わせ立体的に裁断されるのに対し、
和服は平面的に仕立てられる。
言わば一枚の大きな布。
それらを何本もの紐で結ぶことで、着物となる。

浴衣のような単純な着物でも、
腰紐、伊達締め、帯の3種類の紐が必要だ。
一本一本紐を結んでいく動作は、身も心も引き締める。

結ぶという言葉には、互いの関係をつくるという意味もある。
縁を結ぶ。
契りを結ぶ。
ここにも身も心も引き締まるような瞬間がある。

今年も結びの国ニッポンのあちこちで、
たくさんのご縁が結ばれますように。

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星合摩美 20年1月12日放送


Snake Head 1995
和服  福助足袋

明治30年。
大阪堺市の足袋の店「福助」は、大阪市内への進出を目指した。
しかし、知名度が低かったために大苦戦。
起死回生の宣伝キャンペーンを行なった。
市内の家々に、片足だけの足袋を投げ込んだのだ。

すると、片足の足袋の代金だけを持って、客が店に押し寄せた。
これを機に、店の名も瞬く間に広まり、
売り上げも大幅にアップした。
実質半額で足袋が買える、投げ売りならぬ投げ込みキャンペーンだった。

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