お金 太宰治と貯金
太宰治は、貯金がないことを
小説家という職業のせいにした。
少し辯解めくけれども、
私の職業は貯蓄にいくぶん不適當なのではあるまいか、とも思はれる。
はひる時には、年に一度か二度、
五百圓、千圓とまとまつてはひるのだが、
それを郵便局あるひは銀行にあづけて、ほつと一息ついて、
次の仕事の準備などをしてゐる間に、
もう貯金がきれいに無くなつてゐる、
いつのまにやら、無くなつてゐるのである。
その理由を、
自分は耳たぶが大きくないから福が足りないのだと言い訳してみたり、
いやでもあばらやにしか住んでいないのに、と卑下してみたり。
さまざま書き連ねたあと、こう綴った。
結局、私は、下手なのである、やりくりが上手でないのであらう。
再思三省すべきであらう。
貯金ができない理由は自分にあることは、自覚しているようである。